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ユナイテッド航空 連邦破産法11条申請中 2001年9月11日の同時多発テロ発生以来、深刻な経営危機に直面していた全米第2位のユナイテッド航空(UA)が2002年12月9日、ついに連邦破産法11条(チャプター・イレブン;日本における会社更生法)の適用を申請した。
負債総額は228億8,700万ドル(約2兆8,000億円)で、当面はシティグループやバンク・ワンなどからの運転資金計15億ドルの融資を受けて運航を継続し、今後は司法の監督の下で合理化を図りつつ再建を目指すこととなる。 UAが会社更生法を適用するに至った背景 1.同時多発テロ後の旅客減 2.景気低迷 3.運航コスト高 4.低運賃化を背景とした巨額債務と現金不足(すなわち資金繰りの行き詰まり) これらの中で特筆すべきは、UAが慢性的に抱えていた運航コスト高の問題である。 UAは全株式の55%を同社の5つの従業員組合が保有している。このため従業員組合を代表する役員が複数おり、発言権も強い。 これが労使間のネックとなり高運航コスト体質が長期間維持され、同時多発テロや景気低迷、更に低コストで運航されるライパル航空会社との競争に打ち勝てない中、業績の悪化を加速させる一因となった。 この結果、2002年7〜9月期の損失は8億9,000万ドル(約1,100億円)で9四半期連続合計約17億ドルの赤字計上を記録した。 この問題については、2002年9月に最高経営責任者(CEO)に就任したグレン・ティルトン氏が組合と粘り強い交渉を重ねて「5年半で計52億ドルの労働コスト削滅」の合意を取り付けた。 併せて9,000人の人員削減を柱とする合理化の具体策を米政府に示し、金融機関から融資を受けるための債務保証を申請したが、政府は「合理化不足」として申請を却下した。多額の債務返済の期限も追り、債務保証申請却下がUAの経営破綻に直結した。 なお、今後はチャプター・イレブン(会社更生法)の申請を受けて、司法が更なるコスト低減を求めることが確実視されており、問題の根源となった従業員の持ち株制度自体が破棄される可能性もある。 UAのチャプター・イレブン適用申請には過去に例を見ない異質な要素含まれており、これがUAの今後の推移をいっそう予測させにくくしている。 決定的な問題は、UAの規模が米国内に留まらず世界的な見地からも大きすぎる存在であること、資産規模も他社とは比較にならないほど大きいことである。 経営再建にはこの資産の一部売却も検討されることと思われる。グレン・ティルトン氏はすでに、「今後のUAにとって何が有効な資産なのかをしっかり見極める必要性がある。資産の中でUAよりも他社にとって価値の高いものがあると判断されれば、その資産は売却の可能性が高くなる」と語っている。 この中には当然UAが持つ路線網や機材の調整も含まれると考えられる。そうなると次に問題となるのが同社が中核となっている世界最大の航空連合体「スターアライアンス」での立場である。 航空会社が国際的なアライアンス関係を結ぶメリットは、自社が相手方のさまざまなネットワークを有効活用出来ることである。 つまり、UAがバランスを崩した形で弱体化を遂げることは、そのままスターアライアンス傘下の他の航空会社の立場にも影響をおよぼすことになる。 この状況を懸念する観点から、ドイツのルフトハンザ航空がUAの株式を取得することもあり得ると発表しており、今回の件はこのような側画からも航空業界に大きな変化をもたらしつつある。 (なお、同じスターアライアンスメンバーの全日空によればUAとのコードシェア便の運航等には当面影響はない。両社間のマイレージサービスの提携も今の段階では継続される予定) ただし現実的な見方をすれぱ、UAが採算性の高い太平洋路線やアジア路線を急激に減らすことは考えにくい。 逆に国内線のネットワークを大胆に整理した上で、こちらに全精カを集中させてくることも考えられる。 そうなった場合、今度は太平洋市場が激戦区と化す可能性が出てくる。 「UAのネットワークの再構築」については様々な可能性が取り沙汰されている真っ最中である。 マメ知識;連邦破産法11条(CHAPTER 11) チャプター11は申請した企業が再建を行っている間、事業を通常通り継続することを可能にする為に広く用いられるアメリカの法律である。 チャプター11の申請は、回復の為の効率的手段であり、経営再建の為のステップとなるもので、経営破綻を防ぐ為の防御施策ではない。 この点が企業再生法である日本の会社更生法や民事再生法とは若干性格が異なっている。 トップへ 戻る
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